≪トーヤのルートより抜粋≫
「待って、トーヤ――、っ!」
再び重なってきた唇に蓋をされ、自らの静止の声を飲む。
執拗に舌を絡められれば、肩を押すはずだった手で、縋るように引き寄せていた。
顔の向きが入れかえられる時に、吐息まじりの声で訴える。
「本当に、何もなかったのよ」
「わかっている」
「じゃあ、なんで……」
息を荒げながら問えば、離れていったトーヤの唇が、かたく引き結ばれる。
なんだか泣きそうにも見える顔だ。
こういう時のトーヤは、あまり急かさないほうがいい。
経験則でそう察した私は、辛抱強く待っていた。
やがて目を閉じたトーヤが、大きく息を吐いてうなだれる。
「……すまない。お前とスレンのことは、信じている。
それでも確認するのを止められないのだ。この唇が、俺だけのものであると……」
≪スレンのルートより抜粋≫
「誤解が解けて良かったわ。まったく貴方ったら、誰が相手でも嫉妬しちゃうんだから」
「相手が女だってわかってたら嫉妬しねぇぞ」
「ふーん。私は貴方が軍部の男たちと飲んで帰ってこないと、寂しくて嫉妬しちゃうけど」
「帰ってきた後は、嫌になるほど抱かれてるのに?」
「そうね、嫌になる。どれほど貴方に飢えているのか、自覚させられちゃうんだもの」
≪ノールのルートより抜粋≫
殺される前に殺すしかない。そんな状況で誰も殺すなというほど私も甘くない。
けれど今ノールが貫いているのは、ここ数日ですっかり見慣れた顔だった。
私がそうであったように、普通の人間ならば剣先が鈍る。
「貴方は人に対する情をどこかに忘れてきてしまったの?」
「おや、まるで私が人を殺したような言い方だ。
私は愛しい姫が歩きやすいように、足もとの石ころを排除しただけですよ」
あまりにも平然と言われたものだから、一瞬この惨状が夢なのではないかと錯覚を起こす。
けれど赤く染まった手が私の頬を撫でた時、血の臭いが現実なのだと教えてくれた。
眼下の光景に構わず、愛おしそうに口づけられ、再認識する。
――ノールの愛は異常だ。
≪ルジのルートより抜粋≫
「本当にどこにいても俺のことを一番に考えているのなら、ここで舐められても恥ずかしくないよね?」
先ほど宣言してしまった手前、すぐには反論できなかった。
躊躇っている内に、ルジの舌先が敏感な肉芽を優しくつつく。
≪セフのルートより抜粋≫
「貴方、この旅行中はずっと様子がおかしかったわ。
何か私に隠してることがあるんでしょう?」
「あぁ、バレちゃってたか」
「ええ、バレバレよ」
「俺の君への恋心」
「……今はふざけてるんじゃないんだけど」
「俺もふざけてないよ。俺が大事にしているのは、いつだって愛しい奥さんだ。
その人が平穏無事でいられるよう周囲を警戒するのは、そんなにおかしいことかな」
「またそうやって、はぐらかそうとする」
「本心だよ。俺の原動力は、いつだって君なんだから」
≪エスタのルートより抜粋≫
「あっ、んっ! 嫉妬なんて、してないと思ってた」
「これでもまだ、そう思えますか?」
思いの丈を知らせるような突きあげに息が止まる。
ぞくぞくとした快感が背筋を駆け、膣が勝手に引き絞る動きをした。
「貴女が思う以上に、今の私は心配性なんですよ。
だからこうして、幾度も貴女の奥に……私の証を刻みつけたくなる」